最近大麻から抽出されるCBDと呼ばれる成分が注目されており、大麻を原料とした製品が身近になりつつあることをご存知でしょうか。日本で一般的に「麻」と言われるものは、ものによっては海外では違うものを指します。例えば、麻と一口に言っても、日本では大麻以外に、苧麻、ジュート麻だったり、亜麻(リネン)だったりします。どれも麻の一種のような名前をしていますが、植物学上全く違っているものであり、外国の方はそれぞれ違うものとして認識しております。今回は主な麻の一種である大麻草つまりヘンプと、リネン(亜麻)の違いなどを詳しく見ていきたいとおもいます。
日本における大麻草とその呼び名について
まず、前提として日本では、大麻草は主に繊維原料として国内で生産(栃木県等)されています。ここで重要なのは、全ての部位が繊維として利用できるわけではないということです。日本では「茎」から取れる繊維のみ主に衣料や、断熱材等に使用されています。花穂や葉の利用は、麻薬としての大麻草の所持(嗜好利用)と見なされ、大麻取締法による規制に引っかかってしまい、犯罪に巻き込まれる可能性があります。そして、麻の話をする際に、あまり聞きなれない言葉が最近出るようになりました。それはヘンプです。英語ではHempと書き、意味は植物としての大麻もしくは大麻草です。元々は大麻と大麻草が主に「麻」と呼ばれていましたが、ヘンプという言い方で表現される風潮が出てきました。これには理由があり、大麻と聞くと麻薬を連想させてしまい、あまりにイメージが悪いからです。本当は大麻草を原料にした繊維のことを大麻と言いたいのに、麻薬と捉えられたらたまったもんじゃないです。そこで最近は大麻繊維を英語に倣いヘンプと呼ぶ人が出てきたのです。
麻と名前が付いている製品は大麻なのか
他にも麻という名前がついている製品は存在しており、日本では名前が似ているので麻の仲間だと思われています。苧麻、ジュート麻、亜麻、大麻はそれぞれ英語で書くと以下のようになり、また植物学上の分類でもまったく違うものであることが分かります。
○苧麻:
(英) Ramie
(植物学上の分類)イラクサ科
○ジュート麻:
(英) Jute
(植物学上の分類)シナノキ科
○亜麻(リネン):
(英) Flax
(植物学上の分類)アマ科
○大麻:
(英) Hemp
(植物学上の分類)アサ科
ちなみに、衣服等の家庭用品につけるタグなどの消費者に対して表示すべき内容を取り決めている家庭用品品質表示法によると、「麻」と表示するには、「亜麻(Flax)」と「苧麻(Ramie)」のみ許されています。消費者庁にとっての麻とは、主に亜麻や苧麻であって大麻ではないようです。
リネン(亜麻)とヘンプは主に何に使われているか?
ここまでリネンとヘンプが植物学上の分類ではまったく違うものである点が分かったと思いますが、両者はいかなることに使われているのでしょうか。
リネンは主にタオルや衣類などの繊維原料として利用されています。中には水に濡れても丈夫なリネン生地もあり、シーツやカーテンなどの長期間に渡り日常生活で使用されるものの原料となります。ミイラを巻いた布にもリネンが利用されていましたので、生地としてリネンの歴史は非常に長いです。生地の特徴としては、さらっとした肌触りなのが特徴で、病院用のシーツやマスクなどの衛生用品にも使用されています。それと比べてヘンプは衣類などの原料以外にも世界的には使われています。生地としてのヘンプの特徴はリネンと同じく肌触りがいいです。非常に丈夫で、絹の8倍ほどの引っ張り強度があります。しかし、ヘンプの魅力はその多様性にあると思います。海外ではヘンプは医療用の薬としても使用されており、日本でもCBDが注目を浴びるようになってきています。
ヘンプから取れるCBDとは
幻覚や幻聴などの作用があるマリファナの主成分であるTHCとは違い、CBDは人体へ与える悪影響は特に無いといわれています。日本でもTHCが検出されないレベルまで除去されたCBDオイルやリキッドは特に規制されておりません(但し、茎や種子から取れたCBDのみに限る)。個人差はありますが、使用することで安眠ができ、ストレスが減るといわれております(運転前に使用することは推奨されません)。医療現場としては、日本では未だ滅多に利用されておりませんが、アメリカなどでは、既にてんかんによる発作を軽減させる薬としてFDAにより認可されております。リネンとは違い、衣服にも、薬にも使われるヘンプの魅力に気づかれたのではないでしょうか。
終わりに
今回は麻は麻でも様々な種類があり、植物学上はまったく違うものであるという説明から、リネンとヘンプの違いについて書きましたがいかがでしたでしょうか。生地や麻薬以外にも使用されるヘンプについても理解できたかと思います。ヘンプ(大麻)=麻薬という既成概念が覆る日も遠くはないかもしれません。